一般投資家向け

相談レポート「35歳共働き夫婦、いくらの物件を買える?資産運用は何から始める?」

ファイナンシャルスタンダード株式会社 石川裕次郎さん

お金の悩みをプロに相談したら、どのような流れで、どんなアドバイスをもらえるのでしょうか。今回はモデルケースをもとに、一般社団法人ファイナンシャル・アドバイザー協会の正会員であるファイナンシャルスタンダードの石川裕次郎さんに、相談した際のアドバイスについてお話を聞きました。

【ご相談者さん】
女性Aさん (35歳/会社員/年収400万円)
家族・・・夫(35歳/会社員/年収500万円)、子ども1人(3歳)
貯蓄・・・700万円(普通預金のみ)。年間270万円ほど貯めている。

【ご相談内容】
「会社員の夫婦で子どもが1人います。そろそろ住宅を買いたいのですが、どれくらいの物件なら買えますか? 子どもはもう1人欲しいと思っています。また、資産運用をしてみたいですが、何から始めたらよいのかがわからず、普通預金のみです」(Aさん)

【石川さんからのアドバイス】
■まずは「今後の収支バランス」のイメージ確認から

Aさんは夫婦共働きで、毎年270万円という貯蓄がしっかりできているので、ゆとりがありますね。仮に2人目のお子さんが来年誕生されたとして、キャッシュフロー(お金の流れ)がどう変化するかを見ていきましょう。

世帯の手取り収入が現在は700万円で、そこから数年は産休・育休、時短勤務等で少しダウンし、45歳からは世帯収入が700万円に戻り、65歳~69歳から減り、70歳~100歳までは年金を受け取るケースで試算してみます。

支出は、現在から44歳までが423万円、45~59歳が573万円、60~64歳が360万円、65~69歳が300万円、70~100歳が300万円として試算します。お子さんが二人とも私立中学への進学、そして高校、大学と一貫して私立を選択された場合を想定しています。

■フルローンで「6000万円くらいの物件」が購入できそう

そして、ご希望の住宅購入について考えてみましょう。

試算の上でキャッシュフロー表を確認しましたところ、6000万円ほどの物件でしたら、資金について問題なく購入できそうです。購入の際には、現在持っている700万円の預貯金のうち、住宅購入の際の諸経費として300万円ほど使い、残りは「フルローン」で購入しても問題無いでしょう。夫婦共働きで2人分の収入があり、預貯金もしっかりあるうえ現在は超低金利ですので、基本的には極力頭金を入れず「フルローン」で購入しつつ、次で説明しますが、その手元のお金でしっかり運用することがおすすめです。

夫が6000万円の住宅ローンを1本組む形でもよいですし、「夫婦のペアローン」で考える場合は、妻が今後出産により、収入が一時的にダウンする可能性を加味して、夫が4500万円、妻が1500万円と分けて組むのも選択肢かと思います。

物件については、現在は資材の不足等によって新築物件が高めの価格設定になっていますので、中古物件も含めて検討するか、マンションだけでなく、戸建てもあわせて幅広く検討してみましょう。戸建てなら駐車場代がかかりませんし、マンションのような“義務化された”修繕積立金や管理費がかからないメリットもあります。もちろん、お住まいの方の価値観やこだわりなど、“任意で”修繕費やその他メンテナンス費用はかかります。

また、今後資産が増えていくと、「繰り上げ返済をしたほうがよいか」と気になるかと思いますが、現在は超低金利環境が長く続いている「借り手が有利な時代」ですので、その恩恵にあずかって繰り上げ返済はあえてせず、その分を投資資金に回して住宅ローン金利以上のパフォーマンスを目指していくとよいでしょう。

■長期的目線で「資産運用」を考えよう

現在は普通預金のみですが、資産運用にも興味があるとのこと。
Aさんご夫婦はしっかり預貯金もあり、継続的な収入もお有りですので、ぜひ資産運用を具体的に検討しましょう。

投資というと、一般的にはビットコインやFX投資などのギャンブル染みた投機的取引を思い浮かべる方もいらっしゃいますが、想像以上に大きなリスクがありますので、一部の余裕資金で楽しむ範囲ではよいかもしれませんが、将来の為の資産形成をするにはじっくり「投資信託」を積み立てていく方法が最も合理的です。

投資信託を積み立てる際は、つみたてNISAやiDeCoといった税優遇制度を是非活用していきましょう。利益が出ても約20%の税金がかからないという点は大変魅力的です。

具体的にAさんご夫婦の場合は、それぞれが、つみたてNISAを、月3万3333円(年間40万円以内)と、iDeCoを月2万3000円(*ご職業によって異なります)で始めたいですね。つみたてNISAは20年間、iDeCoは65歳までと、可能限り長期でじっくり積み立てをしていきましょう。

そして、現在3歳のお子さんが、もし中学受験をする場合は8、9年後に、大きなお金が必要になるかもしれません。そのため、短期間で現金化するケースも想定して、先ほどのつみたてNISAとiDeCoとは別の積み立ても並行して行うことがおすすめです。

おすすめは、以下の組み合わせです。

<老後費用など、20年以上先に使うため>
●つみたてNISA・・・全世界の株式に幅広く分散する投資信託・・・各 月3万3333円(夫・妻)
●iDeCo・・・全世界の株式に幅広く分散する投資信託・・・各 月2万3000円(夫・妻)

●バランス型ファンド・・・各 月2万円(夫・妻)
<中学校や高校などの教育費として使うため>

合計 月15万2666円

つみたてNISAとiDeCoでは、比較的長期(10年~15年超)の時間軸を利用しますので、世界株式の成長に連動する投資信託がおすすめです。値動きの幅はかなり大きいですが、過去の成績では、期待リターンが6~8%と高い為、長期で継続運用することでかなりの資産アップが見込めます。

一方で、一番下のバランス型ファンドは株式の他に債券や不動産REITやオルタナティブが入った資産が分散されているタイプで、期待リターンが控えめな分、動きの振れ幅も比較的ゆるやかです。そのため、今後教育費として途中で現金化する事を想定し、こちらのファンドを優先して解約するイメージです。

■資産が増えれば、子どもの進路の選択肢も増える

今回は自宅購入、そして2人目のお子さんが来年生まれ、お2人共に私立中学の受験をするケースで想定しましたが、仮に公立中学・公立高校に進学する場合でも、塾通いや習い事も多くかかるケースが現実的に多いため、いずれにしろ資産運用はぜひ検討したいところです。

資産を増やすことができれば、お子さんや家族の未来の選択肢を増やしてあげることができると思いますし、積立投資でお金が増えた分は、場合によっては20年後などに住宅ローンの繰り上げ返済に使うこともできます。

あくまでも複利運用でのシミュレーションですが、先ほどの資産運用により65歳では1億8000万円ほどの世帯金融資産ができる見込みです。資産運用を行わない場合は、65歳の世帯金融資産は8,000万円ほどですので、大きな違いがあると感じていただけるのではないでしょうか。

もちろん相場には上がり下がりとマーケットの荒波がありますので、運用を行うことで一時的には評価損の場合もあります。それでも積み立てを機械的に続けていくことで、下落した場合にはたくさんの口数(投資信託の量の単位)を買えますし、上昇した場合は評価が高まる、この反復運動の積み上がりの結果により、資産を増やせる可能性が大いに高まります。

Aさんの場合は、夫婦共働きでしっかり収入があり、老後までまだ時間があって貯蓄を増やしていける余地が大きい点と、生活費を抑えて毎年大きな貯蓄ができている点が素晴らしく、住宅購入についても大きな不安はありません。さらに資産運用を行うことで、夢や目標などをより実現しやすくなるのではないでしょうか。

今回のアドバイスはご相談の時点で想定される諸条件を基にしたものです。
今後、Aさんご本人・ご家族の状況、就労環境や金利等様々な社会情勢の変化もありますので、運用開始後も定期面談を繰り返して頂き、一緒にプランを更新していくことが必須です。