「資産運用」を成功させるポイントは?注意点は?
株式会社財コンサルティング代表取締役社長 田中唯さん(左) 代表取締役会長 稲葉充さん(右)
「資産運用をしたい」と思ったら、どんなポイントを押さえたよいのでしょうか。また逆に、初心者が注意すべきところはどんなことでしょうか。一般社団法人ファイナンシャル・アドバイザー協会の会員である財コンサルティングの田中唯さんと稲葉充さんにお話を聞きました。
――資産運用を成功させるポイントは、どんなことでしょうか。
田中唯さん(以下、敬称略):「資産運用の目的を持つこと」「分散投資を行い、マーケットに居座り続けること」「信頼できるアドバイザーを見つけること」の3つだと思います。
一つめの「資産運用の目的を持つこと」ですが、単に「お金を増やしたい」という気持ちではじめると、人には欲があるためお金がどれほど増えたとしても達成感はないのではないでしょうか。それよりも、「増やしたお金で何をしたいか」が大事です。
家を買いたい、奨学金を使わせずに大学進学させたい、老後は現役時代の生活の質を落としたくない、などとさまざまな目的があると思いますが、目的にそって資産運用をすれば挫折がしにくくなりますし、何より自分の目的を具体化することで、達成に向かって行動しやすくなると思います。
――二つめの「分散投資を行い、マーケットに居座り続けること」も、大きなポイントですね。
稲葉充さん(以下、敬称略):はい、まず分散投資は、「時間の分散」「資産の分散」「地域の分散」の3つが大切です。
「時間の分散」とは、【いつ】買えばよいかわからないからこそ、買う時期を分散させることです。仮に100万円の投資資金があるなら、100万円をまとめて1回で投資するのではなく、今年50万円と来年50万円に分けたり、10万円を10回に分けたりするイメージです。
極端な話ですが1万円を100回に分ければ、100万円全部が投資にまわるのには8年ほどの長い時間がかかりますから、リスクとリターンはかなりおさえられます。
その方の状況や目的にあわせて時間の分散をさせてリスクをおさえていきたいですね。
「資産の分散」とは、【何を】買えばよいのかわからないからこそ、異なる値動きをするような、株式、債券、不動産、金など、投資対象の資産を分散させることです。
「地域の分散」とは、【どのエリア】に投資すればよいのかわからないからこそ、アメリカやヨーロッパなどの海外の先進国のほか、中南米や東南アジア、中欧、東欧などの新興国、日本など、投資先のエリアを分散させることです。
田中:さらに、この3つを分散させて投資を始めたら、その後も重要ですね。
マーケットは好調なときと、そうでないときがあります。誰もが悪いマーケットは避けたいものですが、いつかはやってくるものです。そんなとき、怖くなって投資をやめてしまうことが多々あるでしょう。でも資産が大きく減った状態で、現金化してしまうことは、非常にもったいないことです。
何があってもマーケットから完全におりることなく、マーケットが不調なときは、むしろ買い時と考えることもできますので、マーケットに居座り続けることが大切です。
――3つめの「信頼できるアドバイザーを見つけること」とは。
田中:人生で必要なお金は、数十万円ではなく、ときに数千万円以上の大きなお金を考える場面が何度かあります。資産運用とは長い付き合いになりますので、途中で目的を見失って心が折れそうになる場面でも、信頼できるアドバイザーがいれば安心です。
稲葉:資産運用をする際に、高いリターンを追い求めれば、リスクも大きくなります。どのようにしてリスクをコントロールするのか、コントロールする方法は多岐にわたります。そこはプロに教えを乞うべきです。さらに昨今、心理学から人には様々なバイアスがかかるので、合理的行動ができない生き物だと言われています(相場が好調で資産が増えれば、高値で増額・買付したくなるし、相場が不調で資産が目減りすれば、安値で減額・売却したくなるのは合理的行動とは言えません)。だからこそ第三者であり、客観的な目を持つアドバイザーを持つことは重要だと思います。
――信頼できるアドバイザーを見つけること」は、まだ日本では言葉としてはなじみのないIFA(※)に相談することも、その一つかもしれません
稲葉:はい。IFAとは、Independent Financial Advisorの略で、IFA法人所属のFA(外務員)」と「個人事業主としての金融商品仲介業者」の総称で、金融商品仲介業者の外務員のことで、私たちもIFAとして活動しています。
IFAは一般的に、お客様と定期的にお会いして信頼関係を作りながら、ライフプランやマネープランを一緒に考え、必要な資金を算出し、投資すべき金融商品を相談しながら、仲介する業務まで、幅広いサポートを行っています。
お金についての相談は、一般的に家族や友人知人に相談しづらいと思われます。相談する人がいないからこそ、信頼できるプロのアドバイザーが必要なのではないでしょうか。IFAとして、お金の知識があるのはもちろんのこと、信頼してもらえる存在になりたいと思っています。
お医者さんが患者さんの命と向き合うのと同じように、私たちIFAは、お客さまの大切なものと向き合っていると常に思っています。IFAの中から、信頼できるアドバイザーを見つけていっていただくのも一つの方法ですね。
田中:例えば、リーマンショックのような大きな相場の下げがあったときにどうしたらよいか、といったことも私たちIFAのようなアドバイザーなら、過去の膨大なデータから、しっかりアドバイスができます。お客さまからも「金融機関は何も連絡してこないので不安だったけど、アドバイザーから密に連絡をもらえてホッとした」というお言葉をたくさんいただきました。
毎年のように税金制度も変わりますし、確定申告の際のポイントも変わるケースが多々あります。そういったことも定期的にアドバイザーと情報をシェアしながら、資産形成に役立てていただけたらと思います
――投資初心者が、人生のプランを立てて、少しずつ資産を増やしていきたいと思ったら、どんな方法があるでしょうか。
田中:例えば30代の方で、リスクが怖いけれど老後資金が不安で、少しずつ増やしたいと考えていれば、投資信託を選択するケースが多いですね。株式を買う場合は、1社だけでも数十万円ほどはかかりますが、投資信託なら月100円や1000円などから始められます。先ほどの3つの分散である「時間分散」「資産分散」「地域分散」も手軽に行えますし、NISAやiDeCoといった節税ができる仕組みを利用できるのもメリットです。
とはいえ、「iDeCoは節税できてよい制度だ」といっても、全員におすすめできる制度というわけではありません。
例えば、収入がまだそれほど多くない20代の方で、数年後に結婚を控えていて、預貯金がほとんどない方なら、毎月2万円のiDeCoを続けるよりも、結婚資金のために預貯金を増やしていくことが先決だと考えるケースもあります。
また、仮に毎月5万円つみたてができる資金の余力がある方でも、性格的に保守的で、相場の上がり下がりが怖いと感じる方なら、投資信託の積み立ては、5万円のうち1万円だけにするケースもあります。
保守的な人、アグレッシブに行きたい人、それぞれ考え方や気持ちなどによっても、資産運用の方法は変わります。また、20~30代の若い方なら、たっぷり時間があるので、2、3年ほどは予行演習ということで相談するケースもあります。
状況に応じて、IFAなどのアドバイザーと一緒に考え、取り組んでいただくことも、資産運用の成功の近道だと思います。
※「IFA(Independent Financial Advisor)」とは、「IFA法人所属のFA(外務員)」と「個人事業主としての金融商品仲介業者」の総称であり、金融商品仲介業者の外務員のことです。