一般投資家向け

失敗に気をつけて!資産運用の前にやりたい「ファイナンシャル・プランニング」とは?

IFA法人GAIA FP/CFP® 新屋真摘さん

「お金を増やしたい」「資産運用をしたほうがいい?」と考えている方は多いでしょう。しかし計画もなく、いきなり資産運用をすると失敗してしまうことがあるので要注意です。その前段階でしておきたいのが、「ファイナンシャル・プランニング」です。なぜ行わないと資産運用で失敗しがちなのか、行うとどんなメリットがあるのかという話を、IFA法人GAIAの新屋真摘さんに詳しく聞きました。

――「資産運用をしてみたい」と思ったときに、深く考えずにすぐに飛びついてしまう方も多いかと思います。

新屋真摘さん(以下敬称略):はい、そうですね。「周りもみんな投資をしている」「とにかく資産運用を始めないと」と焦り、インターネットの記事やYouTubeのおすすめを見てリスクが高い商品に飛びついて、失敗してしまう人も多いです。

お金を増やすことは大切ですが、実はその前にしたほうがいいことがいくつかあります。

現在の家計の状況や、今後お金を使う予定を俯瞰してみること、です。それにより、リスクを取って資産運用をしたほうがいいのか、それともすでにある資産だけで目標が達成できるのかなど、自分にあった方針が見えてきます。

それを考えずにいきなり資産運用を始めると、とにかくお金を増やそうと、必要以上にリスクの高いものに手を出したり、多額な投資をしたりして、下がっても上がっても続かないことが多々あるのです。

――「自分はなぜお金を増やす必要があるのか」という原点から始める、ということですね。

新屋:はい、お金を増やす目的は人によって大きく異なります。住宅購入や教育資金という具体的な目的がある人もいれば、老後資金が心配な人、お金はあるけれど今後のインフレ対策をしたい人、近いうちに年金生活になるので毎月の家計の赤字を補填したい人など、実にさまざまでしょう。

お金を増やす目的と、どのように増やしていくかを現実的な数字を見ながら計画していくことで、その目的を確実に達成できる可能性が上がるのです。

――では、実際にどのように進めるのでしょうか。

新屋:自分の人生の夢や目標を整理して、それらの実現に向けて資金計画を立て、実行していくことを「ファイナンシャル・プランニング」と呼ぶのですが、この「ファイナンシャル・プランニング」を立てていきます。

例えば結婚や住宅購入、出産、転職など、人生のさまざまなプランがあるかと思いますが、それが実現できるように、資金面で計画を立てていくことですね。

一般的には「キャッシュフロー表」といって、横軸に家族の年齢、縦軸に収入と支出を記入した一覧表を作ります。それぞれ何歳のときに収支がどのようになっているかを見ることで、お金の動きが一目瞭然になります。

保険相談や住宅購入相談、資産運用相談などの場面で、ファイナンシャルプランナーや、IFA(※)、保険会社などでも作成してもらえますし、簡単なものでしたら、インターネットで検索すると自分で作れるエクセルファイルをダウンロードできます。

※「IFA」とは金融商品仲介業者に所属する外務員及び個人の金融商品仲介業者である外務員のこと。

――自分一人で作ることもできますが、お金のプロに相談することのメリットはどんなことでしょうか。

新屋:個人では、つい目の前のことに意識が向かいがちで、さまざまな要素を見落とすことも多いです。一方で、お金のプロと一緒にキャッシュフロー表をつくり、「ファイナンシャル・プランニング」を立てていくと、自分が何歳の時に子どもが大学生になるのか、逆に子どもが何歳のときに自分が定年を迎えるのかといったことのほか、家計の収支が、1年ごとでは黒字でも、十数年後は赤字の可能性があるなど、長い目で見て考えることができると思います。

プロと一緒にファイナンシャル・プランニングを立てることで、「実は使途不明金が多かった」「大きな支出が控えていることを忘れていた」といった、個人では気づきにくい点も指摘してもらえるはずです。

――話をしているうちに、我が家の人生設計に発見があるわけですね。

新屋:はい、例えば「5年後に都内のこのあたりに4000万円くらいでマンションを買おう」と個人で計画を立てていたとしても、そこは大人気エリアで住宅価格が高騰中で、実は4000万円ではとても買えない、といった現実を、お金のプロなら指摘ができるでしょう。

「5年後には、子どもが高校生と大学生で大きな教育費がかかるので、手元資金の余裕度をチェックしたほうがいい」「10年後には親が80歳になり、介護費用も要確認」といった具合に、よくあるチェックポイントを先回りして一緒に確認できます。

――「ファイナンシャル・プランニング」を立てることで、安心感が生まれそうですね。

新屋:はい、10年ほどお付き合いのある弊社のお客様では、「ここにお金がかかるとわかっていたので、安心して老後を迎えられました」と言っていただけたり、私たちから「これだけ資産があるので、これから毎年ビジネスクラスに乗って旅行にも行けますよ」とお伝えして、無理な節約をせずに老後を楽しんでいただけたりと、お金を増やすことだけでなく、お金を使うことへの安心感も生まれると思います。

ただ、人生では予期せぬことも起きるもので、計画通りには行かないことも多々あります。想定外の支出や収入の減少があれば「別のこちらを削って調整しましょう」などと提案して、老後の赤字を未然に防ぐ、と臨機応変に対応できることも、プロと「ファイナンシャル・プランニング」を継続的に行っていくことのメリットです。

――自分一人では、なかなか気づけないことも多いですものね。

新屋:そうですね。人生のプランやそれに必要なお金や準備方法は、形のないものなので、“見える化”して整理することが大切です。自分は赤字体質なのか、黒字体質なのか、今後どのようなお金の動きがあるかを確認することで、自分の人生を主体的に考え、自分らしく進んでいくこともにつながるのではないでしょうか。

同じ身長や体重でも、同じ洋服を選ばないのと一緒で、資産運用についても自分にあった方法を考えることで、納得のいくお金の使い方や貯め方、増やし方ができると思います。最近は、NISAやiDeCoなど資産運用を後押しする制度がますます拡充してきました。これらの制度についても、その違いを理解し、自分にあった付き合い方を判断していくことは個人で行うのは難しいでしょう。プロに相談しながら「ファイナンシャル・プランニング」を確認できれば、制度の使い方や資産運用のペースに迷いがなくなり、安心して日々を過ごすことにつながると思います。

また、体調を崩して仕事をセーブしたり、転職をして引っ越しをしたり、子どもが生まれたりと変化があったときにも、プロと一緒に見直し、軌道修正していくことで、安心感が生まれ、資産運用を長く続けていけるのではないでしょうか。

――次回は、どんなお金のプロと一緒に「ファイナンシャル・プランニング」をしたほうがよいのか、また注意点について伺っていきます。